夜明けの前に
静けさの中で、かすかな音が鳴る。
とても儚く、少し恥ずかしそうな音。まるで誰かが見えない糸に星を吊るし、うっかり触れてしまったかのように、星同士がそっと触れ合う音だ。光は迷い、色を変え、どちらにするか決めきれない様子で揺れている。脈打ち、落ち着き、そしてまた揺れる。まるで自分自身も正解を探しているかのように。
廊下が息をひそめる。
壁に掛かった小さなフクロウの時計が、片目をぱちりと開く。続いてもう片方も。針は 5時02分 を指している。
目を覚ましているには、あまりにも早すぎる時間だ。
――創作していなければ。
あるいは、眠るという概念を完全に忘れていなければ。
春はすでに数日前からここにいる。何の前触れもなく、皆が気を抜いた隙にそっと居座ったかのようだ。桜は咲き誇り、この異様に早い時間でさえ、空気にはほのかに甘い香りが満ちている。頼んでもいないのに、気分を良くしてしまうあの香りだ。特に、朝が苦手な人たちにとっては。つまり、ほとんど全員にとって。
廊下の突き当たりの扉の下から、光が漏れている。
普通の光ではない。呼吸しているかのように脈打ち、揺れ動く。そして時折、小さく澄んだ音がこぼれ落ちる。きらきらとした鈴の音。間違いようがない――魔法だ。それも、行儀よく静かにしてくれるタイプではない。触れれば チリン と鳴り、存在を主張せずにはいられない魔法。
扉の向こうで、影が勢いよく動き回る。ぴたりと止まり、また別の方向へと走り、くるりと回る。動きは大きく、正確で、情熱的。まるで恍惚状態の指揮者が、音楽に没頭しているかのようだ。周囲の世界など眼中になく――そしてもちろん、時間のことも。
近づくにつれて、小さな流れ星が空中に現れる。ミニチュアの花火のように弾け、くるくると回り、やがて小さな ぽふっ という光とともに消えていく。このまま扉の前に座り込み、もう少し眺めていたくなる。眠りなんて、あと少し待ってもらえばいい。もっとも、まだ眠っている人たちにとっての話だが。
部屋の中から、小さく集中した声が聞こえる。
「うーん……だめ。赤が強すぎる……」
創作特有の、重たい沈黙が流れる。 そして、
「……うん。これでいい!」
その瞬間、光の色合いが変わる。柔らかく、均整の取れた色へ。まるで光そのものが、ほっと息をついたかのようだ。星の鈴が満足そうに一度だけ鳴り、光の協奏曲は再び勢いよく始まる。どうやら、とても誇らしいらしい。
ようやく、その光景がはっきりと見えてくる。
大きな光るキャンバスの前に、ひとりの少女が背を向けて立っている。桃色がかったオレンジの髪には、星屑のようなきらめきが散りばめられ、背中に流れ落ちている。髪の間からは、先の丸い長い耳が覗き、微調整のたび、ひとりごとに頷くたびにぴくりと揺れる。
一歩前へ。
一歩後ろへ。
首を傾げる。
作品の中に没頭していない者には見えない細部を整える。
彼女は、決して完全には止まらない。左へ一歩。正確な仕草。半回転。批評家のような後退。世界のすべてが、礼儀正しく外で待っているかのように、彼女は完全に没入している。
外から見れば、夜通しの宴が開かれているように見えるかもしれない。だが、通りには一切の音が漏れていない。夜はまだ深く眠っている。翌日に普通の予定を控えた、至極まっとうな存在のように。
近くの木の枝には、数羽の鳥がとまっている。
……疲れている。
とても疲れている。
片目だけ必死に開けている者もいれば、見事な隈を羽毛に刻んでいる者もいる。それでも、誰一羽として飛び立たない。窓から溢れる色彩に、すっかり見入ってしまっているのだ。この段階では、眠気でさえ議論を放棄している。
部屋の中で、少女は作業を続ける。何ものも、彼女を邪魔できそうにない。
「よし! これで最後の仕上げ――」
その瞬間、盛大なあくびが飛び出す。長く、大きく、どうしようもなく。まるで数日間、この瞬間を待ち構えていたかのようなあくびだ。
彼女は目を瞬かせる。一度。二度。肩が少し落ちる。寝不足の一夜、遅く訪れたひらめき――そう思われても無理はない。だが実際には、この絵に 三日間 取り組み続けている。三日。三晩。ほとんど休まずに。創作に没頭すると、時間というものは、途端に理論的な概念になる。
この絵は間もなく、地元の商人たちが春の訪れを祝って開く小さな展示会で披露される予定だ。そして彼女は、この作品を寄付するつもりでいる。集まった寄付金は、古い水車小屋の修復に使われる。この小さな田舎町の誇りであり、自然が豊かで、生き生きとしていて……手入れを怠ると少々手に負えなくなる場所だ。
彼女は数歩下がり、全体を眺める。耳がぴくりと揺れ、迷いを見せる。
「……気に入ってもらえるかな……」
短い沈黙。
そして、とても聞き覚えのある音が、その厳かな空気を破る。
お腹だ。
まるで今になって自分の存在を思い出したかのように、元気よく鳴る。
「あっ……朝ごはん!」
その瞬間、彼女の顔に笑顔が灯る。それはまるで、ここ数時間――いや、三日間で一番の名案に気づいたかのような笑顔だ。
彼女は、創作を始めると止まらない。
特に、それが誰かの喜びや、笑顔につながるのなら。
キャンバスの光が、ゆっくりと弱まっていく。まるでそれ自身も、ようやく休憩に同意したかのように。鈴の音は消え、星たちは名残惜しそうに一つずつ消えていく。
外では、空の色が変わり始める。夜の代わりに、淡い青が広がっていく。鳥たちは姿勢を正し、安堵したように羽を整える。無意味ではあったが、確かに忘れがたい試練を乗り越えた、とでも言いたげに。
少女は背伸びをし、目をこすり、そしてもう一度だけ作品を見つめる。優しく、誇らしく、そして少しだけ不安そうな視線で。
朝が来る。
そしてどこかで、彼女がまだ知らない物語が、静かに始まる。